全国の路上生活者の数をご存知でしょうか?
厚生労働省の調査によると、2007年は18,564人だったのに対し、2020年は3992人と約80%減少しています。
でも、この改善に対しぬか喜びはできません。なぜなら、いわゆる「ネットカフェ難民」などこの数字に算出されていないホームレスの人々もいるためです。
また、8050問題もあります。これは80代の親が(多くの場合引きこもりの)50代の子の面倒をみているという問題です。実家で同居し親の貯金や年金で生活をまかなっていると言われています。しかし、このまま時代が進み80代の親が他界することを考えれば、収入のない50代の子は家賃を払えなくなり、退去を余儀なくされホームレスが増えてしまう可能性は十分考えられます。
普段まちなかや公園で目にするホームレスの人を見て、あなたはどう感じますか?風貌や雰囲気から、近寄りがたさを感じたり、別世界の人だと思ったりしているのかもしれません。
こうしたホームレスの人に対し、咄嗟にとってしまう物理的・精神的な距離。でもその距離感ほどに、あなたはホームレスとは無縁ではないかもしれません。
見えにくいホームレス|路上生活者だけがホームレスじゃない
私たちが一般的にホームレスだと認識している人は、肌が茶色く身体も痩せこけていたり、服が汚れていたり破れていたりする路上生活者ではないでしょうか?
少し考えてみれば気がつくことですが、そうしたホームレスの人は一朝一夕で今の姿になったわけではありません。徐々にそうなっていたのです。
ホームレスになる1番の理由は、職を失うことだと言われています。リストラにあったり、急に病気を発症したり、職場の労働環境や人間関係のこじれで精神を患ったりなどがその原因とされます。だから、単に職を失ったからホームレスになると言っても、それに至るいきさつは実にさまざまです。そしてさまざまであるがゆえに、人生の中で唐突にやってきます。だから他人事ではありません。
職を失い貯金が尽きると、毎日の生活をしのいでいくために日雇いの仕事をするようになります(あるいは、正社員はおろか派遣社員やアルバイトでの雇用も難しくなるため、日雇いの仕事を仕方なくすることもあります)。給料日がくるまでの生活費が足りないからです。
そんな生活は、体調を崩すなどして一時的に働けなくなるだけで、死活問題になります。こうして、いつの間にか家を退去せざるを得なくなり、ネットカフェやカプセルホテルで一夜を過ごすようになります。そして、そんな生活にも余裕がなくなっていくと、24時間営業のファミレスやファストフード店で朝まで過ごすようになります。
ネットカフェやカプセルホテル→24時間営業のファミレスやカプセルホテル→路上生活へ
こうした流れを経て路上生活が始まっていくのです。あなたが見かけたことのあるホームレスは、路上生活以降の人たちです。でも、ネットカフェやマクドナルドで一夜をしのぐホームレスの人たちもいるのです。そうした人たちは、見えにくい存在です。
「路上生活〜ネカフェ生活〜家がある私たち」の間は、残酷なことに自然で滑らか
肌が茶色く破れた服を着た、いわゆるホームレスと、あなたとの間には確かに距離があるかもしれません。
でも、いわゆるホームレスと、準ホームレスのネカフェ生活者はそこまで遠くはありません。そして、準ホームレスとあなたもさほど距離はないかもしれません。
「あなた〜ネカフェ生活者〜いわゆるホームレス(路上生活者)」はグラデーションになっており、真ん中のネカフェ生活者の実態が見えにくいがゆえに、ホームレス問題について自分とはかけ離れたものとして感じがちです。でもこの過程は、残酷なことに自然で滑らかなものなのです。自分がいつ家を失ってネカフェ生活者になってもおかしくないし、その後あなたが公園で見かけていたようないわゆるホームレスになり得ることだって非現実的だとはいえません。
何度も言いますが、私たちにはそのグラデーションがどうしても見えにくくなっています。実際に、目に見えていたとしてもなかなか気づけません。例えば、深夜あなたが友達とマクドナルドでくつろいでいるとき、その隣で一人でハンバーガーと無料の水だけを頼んでうつむいている人が、そうかもしれません。グラデーションの真ん中にいるホームレスの人は、視界に入っていたとしても私たちはその事実に気づくことができないのです。
私たちがホームレスの人にできること
では、そんな人たちへ私たちができることはあるのでしょうか?例えば、ホームレスの人に1対1で直接支援することはハードルが高いかと思います。また、それができたとしても、場当たり的なものとなってしまい、ホームレス問題の根本的な解決・改善に結びつけにくいかもしれません。
私たちができる第一歩は、ホームレスを支援している団体を支援することです。皆さんは、駅前で『BIG ISSUE』という雑誌を売っている人たちを見かけたことはないでしょうか?BIG ISSUEとは、ホームレスの人たちへ雑誌販売という仕事を提供することで、彼らの自立を促す取り組みです。1冊350円のうち、180円が販売者の収入になります。海外の著名人のインタビューなど、骨太な内容ですが、この価格はお手軽です。
街で見かけたらぜひ手にとってみはいかがでしょうか?そこでもしチャンスがあれば「寒くなりましたね」など、なんてことのない世間話を少しでも交わしてみてください。
以下のリンクでは寄付などの支援の仕方も紹介されています。