かつて、不登校や引きこもりを経験した方は、いわゆる「人生のレール」から外れてしまうことが少なくありませんでした。それは、世間に義務教育を受けられなかった人を救い上げる仕組みが発達していなかったからです。しかし、現在では「中卒認定試験」「高卒認定試験」のように、不登校で義務教育を受けられなかったとしても、中卒・高卒扱いになることができる仕組みが存在しています。
ここでは、そんな中卒・高卒認定試験についてまとめていきましょう。
最終学歴が中卒・小卒は就職に不利。そのための認定試験
求人のページを開くとわかりますが、ほとんどのアルバイトや正社員の仕事は、最終学歴が高卒以上の方を対象としています。そのため、普通に暮らしたいと思っていても、高校を卒業できなかった方や中学校を卒業できなかった方は、どうしても就職をする際に選択肢が狭くなってしまいがちです。
中卒・小卒で就職しようとすると、どうしても「学歴不問」の求人を探さなければなりません。しかし、学歴不問の求人はそのほとんどが肉体労働や技術を磨くような求人で、将来性も考えると別の職業を探したいという方も多いはずです。しかし、体が弱くなったときにでも働ける職業のほとんどは高卒を前提にしている所が多く、最終学歴が中卒の方、小卒の方は応募する資格すら得られないということも少なくありません。しかし、年齢や時間の関係から、あらためて中学校・高校に通うのは難しいと感じる方も多いはずです。
そんな方のために設定されている制度が、いわゆる「高卒認定」や「中卒認定」と呼ばれる試験です。これらはそれぞれ正式に「中学校卒業程度認定試験」と「高等学校卒業程度認定試験」といい、合格することができればそれぞれ「中学校を卒業した」という認定と、「高校を卒業した」という認定を受けることができます。
それぞれの試験の受験資格は基本的に「中卒資格を持っていない」「高卒資格を持っていない」のみで、年齢にもほとんど縛りがありません。それぞれが現役中学生、現役高校生でない場合は問題なく受験することが可能です。なお、中卒資格を持っていない状態で高卒資格を取ることができれば、自動的に中卒資格も手に入ります。
そのため、最終学歴が小卒で止まっている方が高卒が最低条件になっている求人に応募したいという場合は、高卒認定試験の合格を目標にするといいでしょう。
中卒・高卒認定試験の内容
中卒認定試験は国語・数学・理科・社会・英語の5科目、高卒認定試験は国語・英語・数学・歴史(世界史A、世界史B)の必修4科目に加えて、科学・人間生活・物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎・現代社会・倫理・政治経済・日本史・地理から4科目~6科目を選択し、合計8~10科目を受験する必要があります。通常の資格のように合計の点数で合否を決めるのではなく、全ての科目で合格点を取る必要があるので注意しましょう。なお、合格点の基準は毎年変わります。およそ60点を超えれば概ね合格点と言われていますが、確実な情報は公開されていません。
中卒・高卒認定試験の内容は、文部科学省のホームページで過去問が全て表示されています。たとえば、国語であれば「傍線部の漢字の読み方を正しいものから選べ」「傍線部の内容を説明した文章で正しいものはどれか」などが代表的な問題です。
数学であれば、中学認定試験のものは四則計算と平方根、簡単なxを使った計算などが出題されます。高校認定試験であれば、二次関数、因数分解などが出題されます。このように、中卒・高卒認定試験の内容は、それぞれ中学校3年生、高校2年生相当の学力であれば問題なく解答できるものばかりです。認定試験は、あくまでも受験者を振るい落とすものではなく、就職や受験を受けることができるようにするものなので、難易度もそう難しくありません。実際に、合格率はおよそ40%と、他の資格と比べれば高めです。
また、高卒認定試験は一度科目で合格点を取ってしまえば、次回以降の試験はその科目が免除されるという特徴があります。また、試験の機会は年に2回存在しているので、前半で必修科目4科目に集中して合格点を取り、後半の試験で残りの4科目の合格を目指すということも可能です。一方、中卒認定試験にはそうした措置がないため、1回の受験で5科目を勉強し、合格点を取得する必要があります。とはいえ、中卒認定試験は高卒認定よりも難易度が低く、受験者の内、80%以上は合格しているので、勉強さえしっかりと行えば合格は難しくないはずです。
とはいえ、絶対に不合格にならないというわけではありません。合格を目指すのなら、必ず過去問を解いて試験対策をし、出題範囲を頭に入れておきましょう。そうした努力が、合格には欠かせないものだからです。
中卒・高卒認定試験を受ける意味はある?
学歴関係なし、未経験歓迎の仕事でも、立派に生計を立てて仕事を続けている人はたくさんいます。実際に職場で働いていて、学歴を気にしたことがある方も少数でしょう。では、わざわざ中卒・高卒認定試験を受ける理由はどこにあるのでしょうか。以下では、中卒・高卒認定試験を受けることによるメリットを紹介していきましょう。
多くの資格の受験資格を満たせる
資格は年収をアップさせたり、待遇を良くしたりするのに役立ちます。資格があるのとないのとでは、出世のスピードや任せられる仕事の幅も違いますし、長い目で見ると生涯年収にも大幅に関係してくる要素といえるでしょう。しかし、ほとんどの資格は受験資格を設けており、最低条件として「高卒以上」の学歴を求められることがほとんどです。
そのため、せっかく仕事を通じて資格を持っていてもおかしくないスキルを身に着けた人であっても、学歴という壁に阻まれて資格が取れないということも少なくありません。そこで高卒認定を受けることで、高いスキルを持っている人がそのスキルを証明する資格を取得することが可能になります。いわば、自分の能力を真っ当に評価してもらえるようになるのです。
最終学歴で差別されづらくなる
学歴は、今や日本社会において「持っていて当然」という考えの方が多くなっています。実際に大学の進学率は非常に高い水準で推移しており、大学卒業を当然と考えている方は少なくありません。そのため、最終学歴が中卒の方は、どうしても職場でも偏見を含んだ目で見られてしまいがちです。
しかも、先述したように出世や待遇の面で何らかの差別が行われてしまうことも考えられます。しかし、高卒認定を持っていれば「高校卒業相当の学力を持っている」と胸を張って言えますし、人事の面で差別されたり、会話の中で偏見を持たれたりすることを避けることが可能です。学歴の話でコンプレックスを持たずに済むという意味で、精神の安定を図る効果もあるでしょう。
まとめ
中卒認定試験及び、高卒認定試験は、何らかの理由で中学校・高校を卒業できなかった人に向けて開催されている国の制度です。中卒認定試験は年に1度、高卒認定試験は年に2度行われています。なお、高卒認定試験に合格すれば中卒認定試験も合格したことになるので、成人してから取得するつもりであれば高卒認定試験を勉強したほうがよいでしょう。
高卒認定試験に合格することで、高校を卒業した場合と同格の待遇を受けることができます。学歴社会の現代において、高卒の学歴を持っておくことは非常に大切です。社会の待遇に不満がある場合は、ぜひ受けてみましょう。