公務員に就職するというと、多くの人は大卒が大前提だと考えているようです。確かに、教師をはじめとして、大卒を前提としてのみなることができる公務員は存在します。しかし、公務員は高卒ではなることができないというのは勘違いです。そこでここでは、高卒でなれる公務員の種類と、具体的ななり方についてまとめていきましょう。
高卒でも公務員になることは可能
高卒でも公務員になることは可能です。実際に、高卒から公務員として働いている人はたくさんいます。実際に、総務省による実態調査によると、調査対象の地方公務員約70万人の内、およそ20万人前後が高卒だったようです。公務員として働いている方に大卒が多いのは世間の実感の通りではあるものの、22%前後が高卒であることを考えると、高卒で公務員になることは「不可能」なことでも、「ごく稀」というわけでもないといえるでしょう。
ただし、受けられる試験が決まっています
公務員になるためには、公務員試験に合格しなければなりません。しかし、高卒では受けられる公務員試験が決まっています。高卒で受けることのできる公務員試験は「高卒程度公務員試験」と呼ばれ、試験問題も大卒向けのものよりも簡単です。しかしその分、働くことのできる職業も限られてきます。
そのため、漠然と「公務員」を目指したいと思っていても、自分が望んでいる公務員の仕事は高卒では就けない可能性もあります。たとえば、「教師」「地方上級」といった試験は大卒レベルの学力を基本として試験問題を出題するので、高卒で受験をするのは現実的な就職手段とはいえないでしょう。
ちなみに、他の制限や受験資格を満たしているのなら、「大卒程度公務員試験」を受験することも可能です。なぜなら、大卒程度公務員試験はあくまでも大卒レベルの学力を想定している問題を出すというだけだからです。学歴が高卒であっても、大卒レベルの問題を解ける自信があるのなら、問題なく受験できます。もし、学歴は高卒であるものの、どうしても大卒程度公務員試験の受験を必須とする職業に就きたいと考えている場合は、独学で勉強をするのも手段のひとつです。
試験には年齢制限なども
試験には年齢制限が存在します。制限の内容は試験によって変わりますが、高卒程度試験の多くが設けている年齢制限が、「中学または高校を卒業してから2年以内」「受験ができるのは22歳まで」という条件です。こうした条件が設けられているのは、高卒程度試験が公務員として若い人材を拾い上げることを目的としているからです。
高卒程度試験の受験に年齢制限を設けないと、本来大卒程度試験を受けるべき大卒の方が高卒程度試験に殺到し、高卒の人材を採用できなくなってしまいます。そのため、試験にこのような厳しい年齢制限を設けられる運びになったのです。つまり、高卒程度公務員試験の年齢制限は若年層に有利に働いているといえるのですが、その一方で、卒業してから勉強をする時間が短くなっているともいえます。
そのため、卒業してから勉強をするのではなく、在学中に勉強をすることを前提として公務員試験を受けるようにしたほうがいいでしょう。
高卒で目指すことのできる公務員の職種一覧
前述したように、高卒で目指すことのできる公務員には制限があります。とはいえ、ある程度選択肢を持つことは可能です。具体的に目指せる、高卒程度公務員試験で就職できる公務員の種類は以下の通りです。
一般行政職(事務など)
いわゆる「公務員」といわれて、多くの人が想像する事務を行う仕事です。地方の役所などで業務を行い、手続きの管理や政策の実装、立案、予算管理やその他イベントの実務など、非常に多くの仕事が「事務」として扱われています。そのせいで、数年働いている内にさまざまな分野の仕事を転々とすることになるのが特徴です。よって、専門性よりも対応力と柔軟性を重視される傾向にあります。
事務職には、他にも学校の事務や警察の事務なども存在しています。学校事務や警察事務は、地方行政の事務と異なってやることは決まっており、転勤も少ない傾向にあります。その分、職場への専門性や知識が求められがちです。
公安職(警察・消防・自衛隊など)
公安職とは、警察や消防、自衛隊といった、国家の治安を守るための職業です。その職業の性質上、常にトラブルと隣り合わせの職場に身を置くことになります。消防官や自衛隊は有事以外はパトロールや訓練で体を鍛え、出動することがあれば危険と隣り合わせの中で働かなければなりません。
その性質上、試験には学力と同時に体力や体格が求められます。消防官や警察官の就職難易度は対象とする自治体ごとに異なり、人が多い地域ほど簡単になる傾向にあります。また、公安職は独自の知識を必要とすることも多いので、就職を考える際にはある程度の知識をつけておいたほうがいいでしょう。
常に危険が付きまとう職業柄、給料は通常の公務員よりも高めです。ただし、配属先によってはかなりの激務が予想されます。
技術職(土木や農林水産など)
技術職とは、公務員として自治体などに身を置きながらも、専門的な問題に対処するための職業です。たとえば、公共施設に設置している機械設備のメンテナンス、取り付け、設計といったものを行うのは地方公務員の技術職です。
その他にも、建築の設計、指導、建物の企画を立ち上げたり、民間企業への委託を行ったりする「建築」分野の技術職も存在します。他にも農業の振興等を仕事にする農林水産の技術職、水路の整備を行う農業土木の技術職、植林のための技術の伝達や指導を行う林業に関する技術職なども存在します。
こうした技術職は、高卒程度試験であっても、現場ですぐに利用できる専門的な知識が求められます。そのため、他の公務員よりも高卒の段階での難易度は高くなりがちで、専門学校向けの就職先といえます。ただし、受験資格さえ満たせるのなら合格率は高めな職場でもあります。
高卒でも公務員になることは可能!難易度は高め
前述したように、高卒でも公務員としての働き口は無数に存在します。しかし、働き口が多いからといって、難易度が簡単だというわけではありません。なぜなら、高卒向けに用意された公務員のポストは毎年限られているからです。それに対して、一般職だけでも毎年15,000人前後の受験者が試験を受けるので、どうしても難易度は高くなります。
実際の合格率はその年によって大きく変化しますが、おおよそ20%前後で推移しています。職種によって大きく異なるものの、30%を超えることもある大卒向けの公務員の合格率と比較すると、高卒公務員の合格率は低いといっていいでしょう。
そのため、高卒で公務員になるためには、事前の勉強が非常に重要です。時間制限も存在しているため、働くつもりであれば、出来る限り在学中にしっかりと勉強をしておいたほうがいいでしょう。
まとめ
高卒で公務員になることは可能です。ただし、全ての公務員になることができるわけではなく、高卒で就職が可能なのは、「大卒程度試験」に合格することができない限りは、一般職に限定されます。
高卒でなることができる試験は、大卒の試験に比べると難易度が高くなりがちです。そのため、高卒で公務員を目指すのならば、出来る限り卒業前に公務員について勉強すると共に、過去問にも取り組んでおくべきでしょう。