「これから起業を考える方に伝えたいこと」起業家・大津愛さんインタビュー【後編】

インタビュー
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主に低所得者やワーキングマザー向けの転職サービスを展開する『株式会社Compass』の、代表取締役CEO・大津愛さん。起業家であると同時にキャリアカウンセラーでもある彼女に、起業に関して前後編に分けてお話を伺いました。

「女性の起業について」というテーマでお話しいただいた前編に続き、後編は「男女問わずこれから起業を目指す方へ伝えたいこと」というテーマで、これから起業を目指す方みなさんに気を付けてほしいことについてお聞きします。

起業の際の注意点。自己実現とビジネスを混同しない

――前編では、女性の起業について伺いました。後半は範囲を広げて、男女問わずこれから起業を目指す方に気を付けてほしいことについて、お聞きしたいと思います。大津さんは最近講演会などで起業について話される機会も多いそうですが、その中で参加者の方からの質問などで、気になったことなどありますでしょうか?

「質問とかではないんですが、気になるのは、自己実現とビジネスを混同してしまっているケースでしょうか。起業したい方というのは“何かやりたい!”や“自分はこれがしたい!”という思いから、それをビジネスにできないか考える場合が多いんですね。例えば、もの作りが趣味の方が、自作のグラスの販売で起業しようと考えるといったケースです。もちろん“やりたい、好き”がスタート地点でいいんですが、その商品である必要があるのか、他の似た商品とどんな違いがあるのか、といったことを考えられていない場合が多い印象があります」

――世の中のニーズがあるのか、といった部分ですね。

「そうです。そこがないと、ビジネスではなく自己実現になってしまう。自己実現が悪いわけではないんですが、ビジネスとして考えないとほとんどの場合は失敗します。何故なら、お客様がどう思うかという視点より、自分がどうしたいかという視点で物事を考えてしまうからです」

次につながらない「そもそもビジネスにならなかった失敗」

――「ビジネスでなく自己実現として考えてしまう」というのは、前編で伺った「情報面の差があるために、男性は“起業=ビジネス”として考えられるのに、女性は“起業=商売”と考えてしまいがちになってしまう」というお話にもつながりますね。

「その通りです。自己実現でなくビジネスとして考えられるか、というのはビジネスの知識や情報量、勉強量で差が出てきます。前編でお話した通り、女性は男性よりその点で環境面のディスアドバンテージがあるため、女性の方が自己実現とビジネスを混同している人が多い印象はありますね。また、自己実現と混同していると、失敗しても次につながりにくい点も要注意です」

――失敗にも、次につながる失敗とそうでない失敗があるということでしょうか。

「はい。そもそも、起業のほとんどは失敗します。ほとんどの人が何度目かの挑戦でやっと成功するもので、最初の起業から上手くいく人なんて本当に一握りです。だからこそ、ちゃんと次につながる失敗をしてほしいんです。自己実現と混同している場合は、すでにあるリソースで勝負してしまっているケースが多い。例えば、自分がやりたいことの延長、自分の趣味の延長、過去に経験した仕事の延長などですね。しかしこういったものは、すでに類似や競合の商品・サービスがたくさんあるものなんです。よくよく考えてみると、“自分がやりたい、好き”以外にはやる意味がないことが多い。それだとまず失敗しますし、失敗しても次につながりません」

――なるほど。自分がやりたいこと優先で考えると、それはすでに誰かがやっているというケースがほとんどかもしれませんね。

「そうなんです。そうすると、“そもそもビジネスにならなかったね”で終わってしまう。何も残らないんです」

次につながる「ビジョンに近付けていくための失敗」

――では、次につながる失敗というのは、どんなものなのでしょう?

「ビジョンがあって、それに沿って必要なものを揃えていったり、確かめていったりする過程での失敗ですね。例えば、○○というサービスはまだ世の中に少ないし、自分のオリジナリティを出せるぞ、ニーズもあるぞ、というものが見つかったとします。そのサービスを実現するために何が必要かを試し、その中で“これじゃなかった”とか“これは良いけどコストがかかり過ぎる”といった失敗がありますよね。それが次につながる失敗です。」

――実証実験のようなものですね。

「その通りです。起業も同じで、最初に立ち上げた会社は失敗しても、ビジョンに対して何がダメだったか、サービスのどこを変えれば良かったのか、組織づくりのどこを変えれば上手くいったのか、などを考えることができれば、ビジョンには確実に近付いていく。失敗するにしても、そういう失敗をしないといけないと思います。それに、ちゃんと失敗している人ほど、怖がらずに次の挑戦ができているとも思います」

男女問わず、0から1を生み出す発想ができる人が起業に向いている

――最後に、大津さんが考える“起業家に向いている、なれるタイプの人”というのを教えていただけますでしょうか。

「ビジネスモデルをつくれる人、あるいはつくりたいと思っている人だと思います。さきほどお話した通り、今あるリソースで勝負してもほとんどの場合は勝負になりません。まだ世の中にないものを考えて“面白いものをつくる!”とか“世界を変える!”と思える人、0から1を生み出す発想ができる人は向いているんじゃないでしょうか。前編でもお話した通り、そうしたアイデアや性格・性質に性差はありません。女性だって男性だって、何もないところから何かを生み出すことが好きな方は、ぜひ起業にトライしてみてはどうかと思います」

インタビュー前編:

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