日本の失業率は低め。その理由と用語の意味を解説

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日本の失業率は、一般的には非常に低い水準で推移しています。特に完全失業率に関してはたったの3%以下と非常に低い推移を繰り返しています。しかし、経済関連の実情と失業率というデータを順番に見ると、どうしてもデータ通りの実感がないという方も多いかもしれません。
その理由は、「失業率」という言葉の意味が起因しています。ここではその失業率について詳しくまとめていきましょう。

まずはじめに。失業率とは?

失業率とは、総人口の内、失業している割合のことです。このことは、字面から簡単に判断できることだと思います。しかし、日本における失業率とは、単純に「現在職がない人/労働人口」というわけではないのです。日本における失業率とは、「完全失業者/労働人口」で表されます。このときにチェックすべきなのが、「完全失業率」だということです。
完全失業者に計上されるためには、具体的に3つの条件を満たさなければなりません。ひとつめの条件は、「仕事がなく、調査期間中に一切の仕事をしていないこと」です。例えばアルバイトであったとしても、調査期間中に少しでも働いた人は「完全失業者」にカウントされません。日雇いのアルバイトや非正規の仕事、はじめてすぐに辞めた仕事であったとしても、「完全失業者」にカウントされることはないのです。
完全失業者にカウントされる2つめの条件が、「仕事があればすぐに就職できる状態にあること」です。家庭の事情や健康上の事情などで就職活動がすぐさま開始できない方に関しては、労働人口にも、失業者にもカウントされません。つまり、鬱病で失業せざるをえなかった方や、両親の介護や子育てで退職せざるを得なかった方は失業率には入らないのです。
3つめの条件が、「調査期間中に仕事を探す活動をしていた」ことです。完全失業者に計上されるためには、その可否を問わず、調査期間中に履歴書を書いたり、面接に行ったり、起業のための資金集めをしていたりする必要があります。つまり、完全失業者とは、有体にいえば「就職する意志があり、就職もできるものの、何度もトライしたのにも関わらず調査期間中に就職できなかった人」といえるでしょう。
条件を見ればわかるように、完全失業者に計上される人はごく少数です。実際のところ、「休業を余儀なくされている人」や「体を壊して休職中の人」など、「隠れ失業者」を含めると、その失業率は10%を超えるという試算もあります。

日本の完全失業率は3%以下。その理由は?

日本の完全失業率は、先述したように3%を下回っています。大過があった年でもそれは変わらず、経済界が大きく揺れるような出来事があった年でも、完全失業率が5%前後で推移していました。この失業率は同じ基準で世界と比較しても非常に低めです。
その理由は、日本特有の事情が起因しています。ここでは、完全失業率が低めで推移する、日本ならではの事情を紹介しましょう。

終身雇用制度と労働組合の消極的な姿勢

完全失業率が低い状態で推移している理由として挙げられるのが、「終身雇用制度」です。終身雇用制度とは、簡単にいえば「最初に内定を出した企業が、定年で退職するまでその人材の面倒を見る」ことです。日本は古くから企業の中に終身雇用制度が根付いており、入社してから実際に退職するまで、同じ企業で働き続けることが多かったのです。それは今現在でも完全に廃れることはなく、終身雇用制度を守っている企業は決して少なくありません。
終身雇用制度を守っている企業が多いということは、「転職・離職する人が少なくなる」ということでもあります。つまり、終身雇用制度を守る企業が多ければ多いほど、失業率は大きく下がっていくのです。特に終身雇用制度は「完全失業率」を大きく下げる傾向にあり、終身雇用制度は日本の失業率が極端に低い理由の一翼を担っているといってもいいでしょう。
さらに、労働組合が積極的に賃上げ交渉を行わないという点も、離職率を低くしている要因のひとつです。労働組合が積極的に活動をしだすと、企業側が労働者に要求するものが段々と難しくなっていきます。高賃金な企業が労働者に多くのことを要求するのは当たり前だからです。しかし、日本では労働組合と企業との関係がよく言えば良好、悪くいえば「なあなあ」の関係であることが多く、積極的に賃金交渉を行いません。
結果、大きく労働者の待遇が改善されることはあまりないものの、賃上げの結果会社の経営が傾いて希望退職者を募らざるを得なくなる、という事態にもなっていません。
このように、終身雇用制度は二重の意味で離職率を大きく引き下げるのに貢献しています。しかし一方で、長い目で見ると「良い職場に行く」という選択肢が取りづらくなっていることもあり、失業率の低さは終身雇用制度の功罪を如実に表しているといってもいいでしょう。

ただし、「隠れ失業率」はもっと大きいという声も

先述したようにデータとして表示されている失業率は、日本はかなり低い状態で推移しています。しかし、「隠れ失業率」はもっと大きいという有識者の意見もあるということを忘れてはいけません。「失業者」として扱われない休業者、何らかの理由によって労働が難しくなった方々もあわせると、その人口は実に10%を超える可能性も示唆されています。
特に大過があった年は、こうした「隠れ失業者」が多くなると警告している有識者も多いようです。つまり、日本の失業率は見かけほど小さくなく、現状、仕事ができない人は、データで見るよりも多い可能性があります。

失業率が低い=職の無い人が悪いというわけではない

日本の失業率が低い、という確実なデータを見ると、実際に失業の状態にある人は焦ってしまうかもしれません。特に、職に就こうとして様々な手法を試している方ほど、自分の現状を悲観してしまうでしょう。大多数の人は「失業者」ではないのにも関わらず、自分が失業者であることに悲しみを感じる方もいるはずです。
しかし、決して悲観することはありません。「完全失業者」であるという状態は、決して恥ずべき状態ではないからです。むしろ、日本における完全失業者とは、よりより状態になろうと努力をしているということでもあります。つまり、「完全失業者」に区分されるからといって、悲観的になる必要はありません。
先述したように、日本には完全失業者以外にも、実質的に失業状態にある「隠れ失業者」が多数存在しています。そうした人の多くは積極的に求職活動を行っていない、ないしは行えないことが多く、求職活動を行っているだけでも、そうした人よりもひとつ前進しているといってもいいでしょう。
完全失業者の状態にある人は、様々なサポートを受けることができます。就職する意志があるのなら、そうしたサポートを十全に利用し、自分にあった職業を見つけるよう専念しましょう。

まとめ

日本の失業率は低い状態で推移しています。しかし、失業率が低いということと、失業者に問題があるということはイコールではありません。なぜなら、日本における失業者とは職を探す意志のある方だからです。自分が失業状態にあるからといって、自己否定をしないようにしましょう。
大切なのは、日本の失業率が高い低いではなく、自分がどうしたいのかということです。失業状態にあることを悲観せず、自分のやるべきことを考えて就職活動を続けましょう。

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