失業保険も扶養も、当事者にとっては非常に大切な命綱です。特に扶養に入れるかどうかは、自分が文化的で最低限の生活をするために重要な点だという方も多いはずです。それは、「失業保険を受けながら扶養に入る」ということはできるのでしょうか。ここでは、失業保険と扶養の関係についてまとめていきましょう。
失業保険受給中の扶養は原則入れません
最初に結論から述べると、原則、失業保険受給中に扶養に入ることはできません。なお、ここでいう「扶養」とは、国の税制で認められている、家族などが一定の条件を満たした上で所得税や社会保険を免除してもらえる制度のことをいいます。たとえば、子どもが定職についておらず、実家に住んでいる場合、「子どもは自分の扶養に入っている」と表現します。
扶養に入ることで、扶養に入られた人は支払うべき税金が減ります。これを控除といい、なるべく多くの金額を控除してもらうため、なるべく賢い形で扶養に入るべきなのです。前述した例でいえば、息子が父親/母親の扶養に入った場合は、父親/母親が本来払うべき所得税や社会保険料が少なくなります。結果的に、年間で支払わなければならない金額が大きく減るのです。ただし扶養に入るためには条件があります。それは、「扶養する人との関係」と「扶養相手の年収」の2つです。
扶養する人との関係は、6親等内の血族、3親等内の姻族が該当します。つまり、いとこの孫や配偶者の兄弟の子どもが自分から最も遠い扶養の範囲です。それより遠い血族や姻族は、基本的に扶養に入れることができません。「扶養相手の年収」の面については、「年収1,300,000円以下」をボーダーとして考えておくといいでしょう。この金額を超えると、夫の社会保険の控除から外れてしまいます。また、年収が106万円を超えている場合は社会保険に加入する必要も出てきます。引き続き控除を受け続けたい場合は、扶養に入る側の年収をチェックしましょう。
なお、この「年収1,300,000円」のボーダーは収入が給与であった場合です。60歳以上である場合は150,000円がボーダーになり、自営業の場合で60歳を過ぎている場合は1,800,000円がボーダーになります。このボーダーラインは年々微妙に動いていたりするので、必ずチェックしましょう。
扶養について簡単にまとめました。このように、扶養とは「低所得者が出来る限り税金に悩まないようにするための仕組み」です。では、同じく最低限の生活をするための政府からの援助金である失業保険と扶養の両方が認められないのはなぜでしょうか。以下で、その理由を詳しくまとめましょう。
失業保険と扶養の両方が認められない理由
失業保険を貰いながら扶養に入れない理由はなぜでしょうか。その理由は、失業保険の受給が健康保険の制度上、「収入」として扱われるからです。先述したように、扶養に入るためには収入が一定以下である必要があるのですが、失業保険は大抵の場合年間に換算して1,300,000円を超えていることが多いので、失業保険を受け取ることができなくなってしまいます。
働いているわけでもないのに貰うことのできる失業保険が「収入」として扱われるのは、不思議に思う方も多いかもしれません。確かに、失業保険で月間12万円前後を貰っていたとしても「月収12万円」と表現する人はまずいないでしょうし、失業保険を給料として取り扱う法律はありません。それでも、健康保険の制度の上では失業保険が収入として扱われるのは、失業保険の持つ性格にあります。
失業保険は「収入の得られない人が、再就職までの間、問題のない生活を送るためのお金」です。つまり、失業保険は収入の代わりに配られるお金なのです。実際に失業保険の金額は前職での収入を元に算出されており、出来る限り前職で働いていた期間の収入と乖離が出ないように配慮されています。
また、失業保険を貰うことができるのは、「社会保険に加入して働いていた人」で、「今から再就職を目指す人」です。つまり、失業保険を貰っている時点である程度自立して働いていた経験がある人です。以上の点から、失業保険を貰っている時点で原則的には扶養に入ることができません。その理由は、簡潔に述べれば扶養に入らずとも、自立して生活をすることができると判断できるからです。
失業保険受給中でも扶養に入れる「例外」もあります
前述したように、失業保険受給中には扶養に入ることは不可能です。しかし、例外的に失業保険受給中であっても、扶養に入ることができるケースがあります。もちろん、収入隠しや申請書類の偽装といった非合法手段を用いず、合法的に扶養に入ることができるケースです。
ここでは、そのような2つのケースについて、具体的に紹介していきましょう。
受給額が扶養認定基準以下の場合
受給している失業保険の金額が低く、扶養が外れる基準を下回っている場合は、扶養に入っていても問題ありません。具体的には、年間1,300,000円を下回るペースでの受給金額であれば、扶養に入っていも問題ありません。金額は1日につき3,612円未満であれば、扶養に入ったり、扶養に入り続けたりすることが可能です。
3,612円という数字が出る理由は、年間1,300,000円のボーダーラインに届いているかどうかを判断するためです。前述したように失業保険の受給は収入として扱われるので、先述した1,300,000円のボーダーを上回らなければ、扱い的には低所得者として扶養に入っていることになるので、問題はありません。
同じ計算で、扶養される人が60歳以上の場合は、失業保険の日当が5,000円を上回っていなければ、例外として扶養に入ることが認められます。失業給付を受け取っていて、扶養に入れるかどうか悩んでいるという方は、自分が受け取っている失業給付の日当を確認するといいでしょう。
給付制限期間と待機期間の場合
失業保険には、「給付制限期間」と「待期期間」が存在します。給付制限期間とは、失業した理由が自己都合の病気や転職のための退職といった自己都合による退職の場合に設けられる、失業保険を受け取ることのできない期間です。設けられる期間は一律3カ月で、この期間は、給付対象者は一切の収入を受け取ることができません。
一方、会社による解雇や倒産による解雇、その他従業員の意志の介在しない形で「会社都合での失職」であった場合は、「給付制限期間」が存在しません。しかしながら、会社都合による失職であっても給付を受け取ることのできない期間が存在します。それが「待期期間」です。これも一律で7日間が設けられており、どのような理由の失職であろうとも、必ず7日間待期しなければなりません。つまり、この期間は失業保険を受け取る方全てが平等に待たなければいけない期間です。
給付制限期間と待期期間は、それぞれ無収入になってしまうので、給付が何円だったとしても、問題なく扶養に入ることができます。
まとめ
原則として、失業保険を受給中に扶養に入ることはできません。しかし、失業保険の金額が年間換算で1,300,000円を下回る場合、失業保険の待期期間及び給付制限期間の場合は、扶養に入ることが可能です。
自分が扶養に入ることができるかどうかはハローワークの職員が正しく教えてくれるので、もし不安に思ったのなら、必ず相談しておきましょう。