一般的に言う失業手当とは、「雇用保険」のことを示しています。この制度は国が働きたくとも働けない方に対して一定額のお金を給付する制度で、雇用保険に加入していたのなら、全ての国民が利用できる制度です。では、肝心の失業手当の額はどう計算すればいいのでしょうか。
ここでは、失業手当の計算方法についてまとめます。仕事を辞めてから生活費に悩んでしまわないよう、参考にしてください。
失業手当の計算方法の基本は「給付日数×基本手当日額」
失業手当の基本的な計算方法は、「給付日数」と「基本手当日額」を掛け合わせたものです。給付日数とはそのまま、失業手当が何日に渡って給付されるのかを示したもので、基本手当日額とは、1日に何円給付されるのかを示したものです。それぞれの決め方について簡単に解説します。
基本手当日額とは
基本手当日額の決め方は、基本的に離職前(離職前6カ月間)にもらっていた給料の額に依存します。給料の額に「給付率」をかけあわせた金額が1日ごとに給付される仕組みです。給付率とは、給与の日当と年齢にあわせて設定されている、「給料の内何%が給付されるのか」を示している数字のことをいいます。
例えば、原則として日当が5,010円を下回る場合、給付率は80%です。過去に1日あたり5,000円を貰っていたのなら、基本手当日額は5,000円に80%を掛け合わせ、4,000円となります。給付率は80%から50%の間で推移しており、12,330円を上回る場合は給付率が50%になります。それ以下の場合は、12,330円に近ければ近いほど給付率は下がると覚えておきましょう。なお、例外として、60歳以上の方は11,090円を境にして、給付率が45%になります。
給付率は時節にあわせて微調整されていくので、詳しい数字は厚生労働省のホームページを確認してください。
給付日数の決め方
給付される日数は、「退職の理由」と「年齢」と「雇用保険者であった年数」によって定められます。
退職の理由には自己都合退職と会社都合退職の2つがあります。もし自己都合退職をした場合、年齢にかかわらず、給付される日数は雇用保険者であった年数によって定められます。その場合は10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日の間、失業手当を受け取ることが可能です。
会社都合退職だった場合は、雇用保険者だった期間と離職時の年齢によって、受け取れる日数が細かくわけられます。例えば、離職時の年齢が30歳未満だった場合、雇用保険者だった期間が5年未満である場合、受け取れる雇用保険の日数は90日が限度ですが、30歳以上35歳未満の場合は120日、45歳未満の場合は150日、45歳以上60歳未満の場合は180日と、年齢が高くなるにつれて失業保険の給付日数は増えます。
失業手当が貰える日数は、いわば安定した就職活動を続けられるタイムリミットともいえます。よって、自分が今仕事を辞めたらどの程度の期間、生活を安定させながら就活ができるのか、しっかりと把握しておきましょう。
失業手当は退職時の年齢によって上限額があります【計算の際に注意】
失業手当の額は、基本的に給料の日割りに依存しますが、支給される金額には上限があります。そしてその上限は、失業時の年齢によって定められているという点に留意しましょう。
年齢の割り当てはそれぞれ29歳以下、30歳から44歳、45歳から59歳、60歳から64歳で割り当てられています。そして、それぞれの年齢での上限金額は、29歳以下が6,815円、30歳から44歳が7,570円、45歳から59歳以下が8,330円、60歳から64歳が7,150円です。
給付率とあわせて、29歳以下であれば日給が13,630円を超えた給料を得ていたとしても、6,815円以上を超えた分の失業手当は受け取れません。計算の際、自分の給料が上述した水準を超えている場合は、上限金額までしか給付金を受け取ることができないので気を付けましょう。
このように上限金額を設けている理由は、失業手当があくまでも「再就職をするまでに繋ぎとなるお金」を主な役割としているからです。そのため、失業者が文化的な生活を送りながら再就職を目指すために必要な、最低限の金額しか給付しません。失業手当の金額を頼りにして借金したり、必要以上の贅沢をしないように気を付けましょう。贅沢をしたいのなら、再就職の後からでもたくさんできるからです。
失業手当はすぐに受け取れない可能性がある? 注意点を紹介【生活費を計算しよう】
失業した後、必要最低限、かかる金額は計算しておくべきです。几帳面な人であれば普段からかかる生活費を計算しているかもしれませんが、そうでない場合は必ず普段通りの生活を送るのにかかる生活費を計算しておきましょう。食費、家賃、水道光熱費、趣味にかけるお金などが、代表的な生活費です。そして、最低でも3カ月分の蓄えは備えておきましょう。
生活費は失業手当でまかなえればいいと考える方もいるかもしれません。しかし、頼りにしている失業手当は、必ずしもすぐさま支給されるものではないのです。失業保険は、支給が開始されるまで、考えられているよりも長い時間がかかります。
全ての受給者に設けられているのが、「待期期間」と呼ばれる期間です。この期間は7日間ですが、失業手当が認証されてからこの期間は、失業手当を受け取ることができません。さらに、失業手当を受け取るためにはハローワークでの手続きと雇用保険説明会への出席、ハローワークへの月2回以上の訪問なども行わなければなりません。さらに、認定されてから支給されるまでには、1ヵ月のタイムラグがあります。
よって、実際に支給されるまでの間、生活をどうするのか考えなければなりません。社宅に入っている場合は引っ越しの費用も捻出しなければなりませんし、ハローワークへの通うための交通費も考える必要があるでしょう。たかが1ヵ月と考えてしまいがちですが、働いていない状態で過ごす1ヵ月は、予想以上にお金がかかります。そのため、離職前に必ず当面の生活費を考えておきましょう。
特に、離職する理由が自分都合であり、特定理由離職者(両親の介護など)でない場合は、さらに給付が遅れます。なぜなら、自己都合退職者には「給付制限期間」が設けられているためです。具体的には3カ月の間、失業手当を受け取ることができません。そのため、自己都合退職をした場合は、さらに長く生活費の計算と見通しを立てておきましょう。
ちなみに、「給付制限期間」の間、アルバイトをすることは一応認められています。ただし、アルバイトが再就職活動の妨げになってはいけないので、生活のためにアルバイトをする際は、必ずハローワークの職員に相談するようにしましょう。
まとめ
失業手当の計算方法は簡単です。1日に貰える給付金額に給付日数をかけあわせれば、具体的な金額が出ます。例えば、22歳から就職した会社を30歳で賃金が月額20万円の方が離職した場合のことを考えましょう。このときの日額は200,000×6(過去6カ月分の給料)÷180(日にち割)×0.8(給付率)=5,333円です。
このように、給料明細さえあれば失業手当の計算をすることは簡単です。そのため、実際に離職する前に自分の生活をどうするのか、見通しを立てた上で生活するようにしましょう。