氷河期世代は、文字通り”中年”だからこそ世代間の架け橋になれる?宝塚市就職氷河期採用枠|職員インタビューvol.2

インタビュー
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バブル経済崩壊のあおりを受け、非正規雇用に就いた世代が多い就職氷河期世代。社会課題として認識されはじめ、いよいよ国も本腰をあげ対策に取り組む中、2019年にいち早く氷河期世代向けの職員採用に動いたのが宝塚市です。WORLD COMPASSでは、令和元年度就職氷河期世代採用枠において採用された男性職員の声をお伝えしましたが、今回はその第2弾として、令和3年度より同枠で採用となり働かれている女性職員のインタビューをお届けします。

自分で生きる道を選んできたつもりが、選択肢が狭まっていたことに気づいた

−学生時代はどういう職業に就きたいと思っていましたか

まず高校1年生の時に、阪神淡路大震災が起きました。小さい頃から通っていた地元のキリスト教会が炊き出しを行っており、そこにボランティアとして参加した際に、「地域に仕える仕事っていいな」と漠然と思いました。先進国の中でも特に自殺者数が多いとされる日本で、教会では「あなたは愛されるために生まれてきた大切な存在だよ」ということを伝えられるのがいいなと思っていました。だから、教会で働きたいという夢を持っていました。地元の教会の牧師さんが女性であったことも、教会の仕事に親しみを持った理由だったかもしれません。

−一般的な企業に就職するよりも、教会で働きたいという気持ちがまず先にあったんですね

はい。高卒には不安が残ったのでバイトを掛け持ちして奨学金をもらいながら短大に通い、短大卒業後は教会で牧師の補佐と塾講師のアルバイトで働くこととなりました。

−これまでのキャリアで苦労した点などはありますか

就職氷河期ということで正社員での採用が厳しい中、もともと心の中にあった教会の職に就きたいということで、私は正社員の道を選びませんでした。ただ、その選択をしたことで、その後のキャリア形成では苦労することもありました。教会で見習いをしていたと履歴書に書くだけでは、理解はあまり得られませんでした。結婚で県外に嫁ぐ際に、教会の仕事を離れました。子育てをしながら、家庭教師などしていましたが、それにしたって履歴書上では空白期間として見なされてしまう。離婚を選び、どうしても仕事に就くことが必要になったときに、転職に不利なキャリアを歩んできたのだと、気づかされました。それは非常に悩ましいことでした。何をして生きるのか、これまで自分で選び取ってきたつもりだったのに、いざ次の仕事を見つけようとなったら選択肢が極端に狭くなっていました。自分の歩んできた道のりについて後悔はしたくないけど、現実は厳しい・・・。ハローワークに通ったりもしましたが、早々にこのままでは職に就くのは難しいなと感じ、少しでも武器になるようなものをと思い、簿記やマイクロソフトオフィスの資格を取ってみたりもしました。

−そのような様々な努力の末、現在は宝塚市の職員として働かれていますが、どのような点を評価され採用されたのだと思われますか

これまでお世話になったそれぞれの職場で、精一杯のことはしてきたと自負しています。「ここは仮の場所だから(どうせ転職するから)」という意識はなく、派遣や嘱託でもスキルアップの種はどこにでも転がっていると思ってやってきました。例えば、いかに業務効率を上げるか考えることは、自分がその職から離れることがあったとしても、その組織にとっては有益なのだからと惜しみなく励みました。「いなくては困る」人材になりたいと望みつつも、「いなくても困らない」ようにスマートで分かりやすい運用方法やマニュアル作成を心がけました。それらで得たスキルは今後の自分にも役に立つことだと思います。がんばっていれば、それを見てくれている人が必ずいると思ってやってきました。

当初夢みた教会の仕事と、市役所での仕事の共通点

−普段の仕事で何か気をつけていることはありますか

上の世代に、そして下の世代の人にも同じように敬意を持つようにしています。就職氷河期世代は、当然ながら年下の上司・同僚とも働きます。就職氷河期世代のいいところは、名実ともに中年(笑)なので、どの世代にもアプローチしやすく、かつ何の肩書もないので怖がられもしない(笑)ところ。誰に対しても敬意をもって接するとき、得られるものはたくさんあります。職場や世代に限ったことではありませんね。まず相手に敬意を持つ。なかなかできていませんが心がけたいです。

あとは、難しいですが、人間関係がうまくいくよう、ストレスを次の日に持ち込まないようにしていました。しんどいことがあった日の翌日は、まず自分からその人に「おはようございます」と言うとか。何か人間関係のトラブルになりそうなことがあれば、早いうちにそういうアプローチをしておかないと、ますますその人に話しかけられないような気持ちや雰囲気になってしまうので・・・。その人に仕事の質問とかできなくなって困るのは自分なので、自分を守るための方策とも言えます。

−いまは宝塚市教育委員会事務局学事課の所属ですが、具体的にどんな仕事をされていますか

小中学校の転出入の管理を主に行なっています。例えば、宝塚市外から転入されてきた人に、近くの小学校を案内したり、転出される際の手続きをしたり、各学校とやりとりをしたりしています。他には就学奨励費の手続きとか。市役所には色んな仕事があるので、これまでとまったく畑違いの仕事をすることになるかもしれないとドキドキしていました。

−これまでの経験に近い業務を市役所でも行うことになったんですね

はい。市役所での業務はもちろん初めての仕事ばかりですが、業務の中で使用する単語の中には聞いたことのあるものがあったりするので、ある程度スムーズに入職できました。

−いま宝塚市の職員としてやりがいを感じていること、今後こういう仕事をしたいということがあれば教えてください

入職してまだ半年なので具体的にこれといったものがまだ思い浮かばないですが、なんでも前向きにやっていきたいです。市役所の業務は、何であれ結局は市民の方々につながっています。市民や地域の方々のお役に立ちたいというのは、当初教会の仕事を選んだ理由と通じている部分もあるので、そこにやりがいを感じています

−これからキャリアアップを目指される方、ヅカキャリを利用される方に向け、一言いただけますか

宝塚市役所に入り最初の新任研修で「なるほど」と思ったのが、講師の方がおっしゃった「自分がどうして雇ってもらえたのか、ちゃんと尋ねるようにしましょう」ということです。雇う側には、あなたを見込んだポイントや入社(職)後に期待されていることが必ずあるから、ということでした。

宝塚市の氷河期採用について、私は2度チャレンジしており、1年目に不合格を知った時はやはりショックで放心状態でしたし、怖くもありましたが、自分の立ち位置を確かめようと、順位開示に行ったんです。その時に順位が悪くなかったことと、何より人事の方が誠実な対応をしてくれたことで、「悔しい」というより、もう1回チャレンジしようという爽やかな気持ちになれました。私には、あの順位開示が転機でした。やみくもに落ち込むだけで終わらずに済んだ。行かなければ、漠然と「お呼びじゃなかった」とふさぎ込む可能性もありました。つらい時に少しの勇気を出したことが、次に繋がったと思います。

ヅカキャリの利用者さまに向けて伝えたいことは、しんどいこともあると思いますが、自分を大切にしてほしいということです。すでにみなさんがんばっていると思うので自分が何かアドバイスできることはないですが、ちゃんと食べて睡眠をしっかり取って、自らを健やかに保つ工夫をしていただきたいです。就活や転職がうまくいかないと、不採用=自分の能力が低いのだと、どうしても結びつけてしまいがちですが、単にあなたと会社の相性の問題なのかもしれません。その点では、企業とのマッチングをしてくれるヅカキャリはすごく有用なのではないかと思います。

精神状態が良くないと、非正規や給料が低いことをそのまま自分の価値と結びつけてしまったり、人と比べてしまったりして、さらに心がしんどくなってしまいます。自分の仕事が何であれ、あるいは仕事に就いていなくても、あなたに価値がないわけでなく、あなたは大事な存在。周りにそう言ってくれる人がいないなら、自分で自分を労ってあげてくださいとお伝えしたいです。

結び

今回お話をお伺いした職員の方は、就職氷河期という厳しい時代の中でも自分の中で仕事に対して芯を持たれている印象を受けました。ただ、それだけ主体的な姿勢であっても希望する就労に結びつかないのかと思うと、改めて就職氷河期の厳しさを痛感しました。また、この世代だからこそ「世代間の架け橋」になれる存在でもあり、就職氷河期世代の強みでもあるということを感じさせるようなお話でした。

ヅカキャリでは、主に就職氷河期世代の方の就職やキャリアアップを、オンライン上でのキャリアカウンセリング等を通じて支援しています。ご自身のペースに合わせてご利用いただけますので、ぜひご活用ください。 

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